自閉症と診断された息子さんのお母様から「寄稿をしたい」と有り難い連絡を頂いた時、その内容をお伺いしたと同時に「ぜひぜひお願いします!」と即答してしまいました。

息子さんと向き合う日々を、折れることなくひとつひとつ乗り越えるために、寄り添い、共に考え、支えてくれた支援者達のお話とお聞きしたからです。

立ち止まってしまったお母さんを、どうしたら背中を押してあげられるのか……きっとこのお話は、今支援を頑張っている方々の中に、大切なことをお伝えすることができると思います。

そして、頑張っているお母さん達にも、こんな支援者達がいるということを知って頂きたい。

また、障害がなくても子育てに疲れたり、大変な思いをしているお母さんにも、そして、お母さんに寄り添うご家族の方にも、同じようにお伝えできると思います。

支援って何? そんな疑問に、一つの答えが見えてくるのではないでしょうか。

今回、シリーズで書いて頂けることになりました! ぜひ、続きも楽しみに読んで下さい。

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(寄稿)

【わたしの出会った素敵な支援者①~未就学療育編~】

息子は2歳の時に、自閉症と診断された。

診断を受けてから間もなく、自宅から程近い療育センターに通いはじめた。

はじめて体験する、自閉症の息子の子育ては日々、わからないことばかり。行動のひとつひとつがわからずに、何時間も泣き続ける息子の傍らで、理由もわからないまま戸惑う私もまた、よく一緒に泣いていた。

息子は睡眠障害があり、一晩中寝ない日も少なくなかった。また、刺激に敏感で、些細なことで癇癪をおこし、私に噛みつくこともあった。

今でこそ、原因は何か?おおよそのことは考えることができるが、当時は、殆ど理解できていなかった。また、理由は検討がつくものの、どのように対応して良いのかわからずにいた。

眠れない日々と、息子の行動への対応と、週5日の療育に、家庭のこと、日々を過ごすことがやっとで、私も疲れきっていた。そして、何より、些細なことに敏感に反応してしまう息子が辛そうだった。そんな時に、いつも寄り添ってくれたのは、療育施設の保育士のA先生だった。

当時、私は30代に入ったばかり。私より若いその先生はおそらく20代後半だっただろう。泣く、喚く、噛みつく、じっとしていられないの息子は、療育先でも、みんなが手を焼いているように思えて、通うのも迷惑なんじゃないか、と思ったこともある。

療育先では、いろんな職種の先生方に関わっていただき、いろんなアドバイスもいただいた。アドバイスに従って、様々、試してみたが、なかなか、即効性のある対処法は見つからず、『私が悪いのかしら…』と思うこともあった。

せっかくのアドバイスに、効果のある結果を出すことができなかったため、相談もしづらくなっていった。

一緒に通っている、よそのお子さんたちは、落ち着いて席についていたり、活動に参加できていたりするのを見て、みんなと違うことを受け入れられずに焦りや孤独を感じていた私に、A先生は、よく声をかけてくれた。

家庭のこと、子どものこと、色んな話を聴いてくれた。家での息子の状況や、どんな時に癇癪をおこすのか、噛みつくのか、慎重に聞き取り、その上で考えられる対処法を一緒に考えてくれた。

母子通園の療育は、通園中は、親が子どもをみるのが基本で、部屋から飛び出したり、暴れる息子に一人で関わらなければならないことも少なからずあった。

そんな時、A先生は、私に変わって息子を見てくれることもあった。部屋から飛び出した時は、部屋の外で、一緒に話ながら、子どもを見ていてくれた。それが、とても心強かった。

ただ、子どもを見るだけでなく、細かく息子の行動を観察してくださっていた。

A 先生のアドバイスは、いつも具体的だった。

聴けば、まちを歩く時には、あの子にはこの靴だったらはきやすいんじゃないか、あの子には、この服だったら抵抗なく着れるんじゃないか、と、いつもアンテナを張っていたそうだ。

当時は今から20年くらい前。今ほど、インターネットも普及しておらず、情報も少なかった。だから、具体的なアドバイスは、とてもありがたく感じていた。

また、考えを押し付けることもしないA 先生だった。息子や家庭の状況に合わないとお話しすると、また、別の方法を考えてくれた。

関わりの難しい子どもを持つと、時として、親の在り方や、家庭での養育について問題視されることがある。だが、親も、どのように関わっていったら良いのか、とても悩んでいる。誰からも理解されない、という孤独感に追い詰められそうになる。

そんな時に、気にかけて、寄り添って、一緒に考えてくれる支援者の存在は、まだ先の見えない幼少期の自閉症児の子育てを、困難な中にも前を向いていけるように後押ししてくれるものだった。

そして、観察する事や、子どもを取り巻く環境にアンテナを張ることを教えてくれた。私より、いくらか年若いA先生から学んだことは、今でも私の中でいきている。

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