hand to handは、障がいを持った子どもの親達と、福祉、法律、金融機関のプロ達との、相互理解と学び合いの場所です。
第5回の勉強会は、1月17日、ピーサポネットにて開催いたしました。
障がい者が親元を離れて暮らすことを本人や親が希望したときに突き当たる「受け入れる場所がない」という現実について、福岡市の資料を参考にしながら意見を交しました。
現在、福岡市においても障がい者を受け入れる入所施設やグループホームなどが足りない、待機者が多いと、親たちの間でも頻繁に話題になります。
実際にその供給がどのくらい不足しているのか、詳しい親たちは少ないのではないでしょうか。
今回は、hand to handの後援をしていただいているサンクスシェアさんにご協力いただき、福岡市における供給不足の現状を調べていただきました。
代表の田中さんに解説いただきながら、これからのことを探る会となりましたが、2時間以上に渡る熱いディスカッションが繰り広げられ、この問題の重要さを改めて考え直す機会にもなりました。
入所施設について
福岡県では132箇所の施設があり、その中でも福岡市は13箇所の施設があります。
といっても市内の都市部にはなく、中心部からは離れたところになります。
福岡県の入所施設一覧は以下を参照↓
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187862
実際の空き状況について、ある特別支援学校の進路の先生から情報をいただくことができました。
先生によると、情報は集めてはいるが、詳しく公開することは控えたいということでしたので、地区に分けて数だけ教えていただくことができました。
最新情報であるかどうかはわかりませんが、おおかたの傾向として、さほどの誤差はないのではないかと思われます。
◆ 空き収集情報(福岡県) by 特別支援学校
地区 | 知的 | 身体 |
福岡 | 3(16) | 3(17) |
筑豊 | 9(26) | 7(8) |
北九州 | 9(15) | 1(9) |
筑後 | 11(30) | 3(11) |
知的障害の事業所は、福岡地区に16箇所ある中で3箇所に空きがあり、身体に関しても17箇所の中で3箇所に空きがあるということでした。ただ、何人入れるかは公開して頂けていません。
福岡地区と筑豊地区、北九州地区、筑後地区と4つの地区で数がそれぞれわかりましたが、やはり都市部からは離れた筑豊、北九州、筑後の地区が断然多いということが分かります。
田中さんが言われるには、相談支援をやっていても、その3地区から探さなければ調整が難しいというのが現実であるとのこと。
田中さんの実績であっても、相談を受けた時に、福岡市で探して調整できたことが実際にないというお話があり、市内で探すことはかなり困難であることが伺えました。
相談を受けて施設に空きが見つかったとしても、子どもさんにその施設が合うのか、子どもさんの障害の重さに対して支援が可能である施設か、様々なことを見ていくうちに、やはりご案内するのは難しいという結論になることもあります。
あるお子さんの事例で、施設で問題行動を起こしたことで、その施設には居られなくなり、ご本人は入院をすることになりました。そのお子さんをどうしたらよいのか・・・。
話し合いの中で、ご両親は地域で暮らすのは難しいだろうと考えられて、入所施設を希望されました。
そんな中、都心部からは離れた場所に、たまたま問題行動がある方を受け入れる施設ができるということで、案内することができたそうです。
一旦入所してしまったら、入れ替わりがそんなにあるわけではないので、新たに調整するとなると大変難しい場合が多いのですが、このようなケースもあり、タイミング的にも良かったと言えます。
グループホームについて
情報提供は、福岡市の基幹相談支援センターによるものです。グループホームについては、センターが2ヶ月に1回空き情報をFAXで集めていて、市内の全基幹センターが把握しています。
福岡市グループホーム一覧は以下を参照↓
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187860
◆ 空き収集情報(福岡市) by 基幹相談支援センター
事業所・人数 | 空き状況 |
150か所 | 13か所 107人分 |
空いているところはあるように見えるのですが、先にも述べたとおり、調整しようとすると難しいということがあります。
地域性だったり、場所だったり、その利用者に合った支援員がいるか、夜間帯の状況など、様々な条件を見ながらマッチングしていかなければならないのですが、この条件が難しい、この部分があるから利用できそうにないなどという場合は、利用が難しいということになってしまいます。
箱物としてはあるのでしょうが、ニーズに対して足りてるか足りていないかは、ご本人の状況によって見方も変わることになります。
利用したいその方に対して考えていかなければならないので、そういう意味では「ない」と言わざるを得ない場合があるということです。
居住を作る
福岡市の居住支援の取り組み
福岡市では、公共、民間の団体が集まって住居支援について協議する「福岡市居住支援協議会」があります。
福岡市居住支援協議会についての概要は、以下の通りです。
居住支援協議会とは,低額所得者,被災者,高齢者,障がい者,子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者(以下,「住宅困窮者」という。)の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るため,「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づき,地方公共団体や関係業者,居住支援団体等が連携し,住宅困窮者及び民間賃貸住宅の賃貸人の双方に対し,住宅情報の提供等の支援を実施する組織です。
福岡市ホームページより引用
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/jigyochosei/life/kyojuushienkyougikai.html
福岡市は、グループホームを作りたいという法人と、協力できる不動産のマッチングもしています。
福岡市障がい者グループホーム開設応援https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/shisetsushien/shisei/GHkaisetuouen.html
グループホームに対応した居住支援
資料を参考にしながら、参加者からは次々に発言が出てきましたが、グループホームが増えてほしい、グループホームが作れないかというディスカッションの中
・市としても、重度障害者のグループホームへの意識は薄いように思える。
・スプリンクラーがネックになっている場合も。
設置基準があり、当たり前なのかもしれないが、重度の利用者さんに対しては基準が厳しくなるので、さらに費用はかさむことになる。
・初期費用が大きいので、簡単に手を出すことはできない。
・グループホームの報酬単価も決して高くない。人を集めるのも一苦労で、世話人もなかなかつかないとの話もある。
・費用については補助も少ないので、とにかく費用面が1番のネックになる。
などなど、現実的でネガティブな意見が集中しました。
今までも多くの事業所がグループホームを作ることに苦労をしてきた経緯も知っていたりと、その難しさともどかしさからくる発言がほとんどでした。
少なからず、明るい希望の見えるようなことではないことを全員が認識していて、これら福岡市の取り組みを、いかにすれば有効に、少ない費用と資源の中で実現に向かわせることができるのか、出ない結論の中でも探ろうと多くの発言が交わされました。
福岡市の空き家を活用した事例
市の社会福祉協議会が、社会貢献型空き家バンク事業を立ち上げ、空き家利用の募集を行っていました。
そこに市内と市の近隣にて障がい者福祉サービス事業所を運営している一般社団法人が、事業所の利用者さんの寮にしたいと申し出たことで、この事業で実を結んだ一つの事例となりました。
なかしまホーム 障がい者のシェアハウスに
(社会福祉法人福岡市東区社会福祉協議会ホームページより)
なかしまホームの事例から見えてくるのは、空き家バンク事業の登場により、物件を探すための手段として今後も増えてくるのではないかということです。
また、社会福祉協議会が介入することにより、様々なコーディネートをして提案をしてもらえること、福祉を媒介に地域貢献できることなど、開かれたホームを実現する一つの方法として今後認知されていくと思われます。
ただ、物件が豊富なわけではなく、利用者に寄り添った条件に合わせて探すのは、やはり大変であることは変わりません。
空き家が、福祉の貴重な資源になることがもっと認知されていけば、空き家を提供してくれるオーナーも増えてくるかもしれません。
そうなれば、グループホームを作りたいと思った時、場所の選択肢が広がってマッチングもしやすくなるのではないでしょうか。

第五回hand to handの勉強会を終えて
今回も、hand to handのメンバー達でも興味津々の内容でありました。
なかなか当事者達にも伝わってこない情報を、各所にコンタクトを取って資料を収集してくださったサンクスシェアさんと代表の田中さんには、心から感謝いたします。
今回で理解できたことは、施設を利用したい人に対して、施設の空きは少ないとはいっても、全く空きがないという状況ではないということでした。
その中でも、利用者の障害の程度と生活の状況に応じて、本人に合った所をそれぞれが選択できるほどの数と状況にはないことが「利用することができない」ことに繋がっていることもわかりました。
そうなると、自分たちで利用できる、本人に合った居住施設を作るという考えにも至りますが、それを支援するシステムはあっても、使いやすいものではなく、個人や有志数人で作るというのはやはり難しいという結論に立ち戻ってしまいます。
結局、大きな施設や事業所が作ることに頼らざるを得ない現実を、改めて確認する形となりました。
行き場が見つからずに家族だけで支え続けるのにも限界はあります。
それこそ親亡き後の最も大きな問題であり、親たちにとってはこれを解決できない限り、死ぬこともできないのです。
今回、田中さんが「親亡き後のことも、相談支援員の大事な仕事だと思います。難しくても、なんとか色々考えていきたい」とおっしゃいました。
当事者の親達としても、一人で戦うわけではないと心強く、このように考えて寄り添ってくださる人たちがいることを忘れてはいけないと思いました。
そしてhand to habdの専門家チームも、損得抜きで関わって力を貸してくださっています。
この問題についても、今後も専門家の力をお借りしながら探っていきたいと思います。
今回もディスカッションは活発に行われ、毎回ではありますが、全てをここには到底書ききれません。
興味のある方は、一度この勉強会に顔を出してみてください。

今回の勉強会で使用された資料について、公開できる分の資料をまとめて下記に掲載しています。
今回の勉強会で使用した資料一覧
◆ 入所施設一覧(福岡県)
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187862
◆ 入所施設空き収集情報(福岡県)
by 特別支援学校
地区 | 知的 | 身体 |
福岡 | 3(16) | 3(17) |
筑豊 | 9(26) | 7(8) |
北九州 | 9(15) | 1(9) |
筑後 | 11(30) | 3(11) |
◆ 福岡市グループホーム一覧
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187860
◆ グループホーム空き収集情報(福岡市)
by 基幹相談支援センター
事業所・人数 | 空き状況 |
150か所 | 13か所 107人分 |
◆福岡市障がい者グループホーム開設応援
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/shisetsushien/shisei/GHkaisetuouen.html
◆ 空きや活用(なかしまホーム)
なかしまホーム 障がい者のシェアハウスに
◆ 福岡市障がい福祉計画(H32年度目標)
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187888
◆ 福岡市居住支援協議会
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/jigyochosei/life/kyojuushienkyougikai.html
◆ 先進事例:はるにれの里(北摂杉の子会)
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187864
◆ 強度行動障害の課題(東京都福祉保健財団)
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187865
◆ 通過型支援の考え方(千葉県)
https://www.thanksshare.jp/download?file_id=187866
これら資料は、今回なくてはならない情報であったと同時に、深くディスカッションすることを可能にしてくれました。
サンクスシェアさんで収集いただいたこれらの資料については、サンクスシェアさんのホームページでも確認することができます。
◾️サンクスシェアホームページ
https://www.thanksshare.jp/
今回のhand to handのページ
https://www.thanksshare.jp/112770.html
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第6回hand to hand は・・・
解っているようで実は……そんな声の多い「障害年金」がテーマです。
障害年金のスペシャリスト、社会保険労務士の堤さんをお迎えして、障害者の年金の仕組み、受け取り方、運用の方法、今後の展望などなど、様々な角度から詳しく学び、全員でディスカッションしていきます。
第6回勉強会=======
日時:令和2年 2月21日(金) 19時〜21時
場所:ピーサポネット
福岡県福岡市東区箱崎1丁目10−7 2階
https://www.p-sapo.jp
定員:10名(毎回15名程になっています)
参加費:500円
主催:親亡き後を考える会
後援:サンクスシェア
https://www.thanksshare.jp/
勉強会は、福岡市東区の箱崎駅近くのピーサポネットで行なっています。
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