令和2年7月19日、告知しておりましたhand to hand のweb交流会を無事に開催することができました。
当日ご参加頂いたのは21名でした。
当事者家族はもちろん、福祉相談機関、事業所・放課後等デイサービス・保育士などの支援者、介護士、法律、金融、行政まで、専門家と言われる方々が多くご参加下さいました。
それぞれの専門家の方達は、当事者家族達の質問への回答や、様々な情報を教えてくださり、とても中身の濃い会話が途切れることなく続きました。
さらに取り残されていると感じるこの課題にも、当事者家族にはとても深刻で、けれどそれを自分たちがどうすれば受け止められるか、知ろうとしている人たちの存在も知ることができたのは、大変大きな収穫だったと思います。
これぞhand to handならではという交流会ができたと思います。ご参加頂いた皆さまには感謝申し上げます。
交流会は2時間でしたが、その時間も過ぎての終了となりました。
では、内容の濃かった交流会についてのご報告をいたします。
◆参加者から見えてきた現状と問題点
今回の参加者から事前にアンケートをお願いして、19件の回答をいただきました。(以下、抜粋)

そのため女性の割合が大きい。
年代を見ると、やはり「親亡き後」の問題に向き合わなければならなくなった年齢の方が多い。(人数が多い順に50代=40代>30代>70代>60代)

15.8%。次に多かったのが「一般就労30代~40代」と「事業所通所30~40代」さらに「高校生」が10.5%で並んだ。続いて「入所」「在宅」「中学生」「小学生」と同じ5.3%であった。

・困っている(悩んでいることがある)
・今、不安なことがある
・将来が不安
・親亡き後が不安
・制度やサービスについて知りたい
・療育専門家や福祉関係者と繋がりたい
・同じような人、ご家族と繋がりたい
・悩みを話せるところは欲しい
・交流会に参加したい
・当事者やご家族の想いを聞きたい
・子供が幸せに生活できる住処を求めている
・いろんな情報を知りたい
・勉強のために参加
最も多かったのは「親亡き後が不安」次に多いのは「制度やサービスについて知りたい」「同じような人、ご家族と繋がりたい」「交流会に参加したい」が同じポイントで続く。
さらに「将来が不安」「療育専門家や福祉関係者と繋がりたい」と並ぶ。
今回の勉強会のテーマでもある「親亡き後」について、親も子も、意識せざるを得ない年齢になった、という参加者がほとんどでした。
さらに、まだ子供が小さい保護者の興味関心としては、まだまだ先のことと捉える傾向にあるようです。
◆こんな意見が交わされました(抜粋)
当事者家族同士、当事者家族と専門家とのやりとりを少しだけ・・・。
★65歳問題は関心が高かった。

グループホームは終の住処ではないということをよく聞きますが。

一度入所できたからといって、ずっと続くわけではないと聞きますよね。
様々なトラブルや本人が介護が必要になった場合など、施設が変わることも考えておくべきかな。

障害者のグループホームで暮らしていても、65歳になったら介護保険に移行してしまうことで、施設を変えることになるのでしょうか。

65歳超えて介護保険になっても、市町村が認めた場合は障害者のグループホームに住むことができます。
でも法律の中では介護保険が優先なので、その後に本人に介護が必要になると、グループホームを出て介護施設に入ることになります。
支援している周りが、ご本人をしっかり囲んで65歳問題を見据え、話し合っておくことが必要だと思います。
★「後見人のことって、よくわからないし難しいな」という思いが、先延ばしにしてしまう原因かも。

子供が小さいと「成年後見制度」という言葉はなんとなくは聞いたことがあるけれど、後見人ってどう?大丈夫なの?と心配。システムなど、詳しいところも知らないです。

成人に差し掛かる子供ですが、後見人については全然考えていませんでした。今後は考えていかなければと思いました。誰がいいのか、どんな人がなるのか知りたいです。

お金のことは初めて知りました。ちゃんと知っていかなければですね。
親として、子供の居場所を探していきたいと考えています。

hand to handでも、それらのことについてしっかり深掘りして学んでいくので、よかったらぜひ参加してみてください。
場合によっては専門家とおつなぎできるし、4〜5人集まって場所を用意してもらえたら、勉強会を設定できますよ!

制度が毎年のように変わって訳が分からなくなります。親のアンテナの張り方は?

制度は地域の条例が優先されるので、居住地で公開されていることを知る必要がありますね。
市のホームページや市政だより、市会議など、時々チェックをするのもいいのではないでしょうか。
★70代のお父さんにも聞いてみました!

成年後見制度について、これからしっかり準備をしていこうと思っています。
実際、兄弟が面倒をみると言ってくれることに甘えがあったんです。でも、それはいけないという思いが、今は強くなっています。
兄弟児が見てくれるという考えもあるのですが、その兄弟児が自分の生活を守ってほしいという思いもあります。

貢献制度をお願いするか、社協がやっている安心サポートなどを使うか、今考えているところです。兄弟がやってくれれば、家族信託を使ってもいいと思っています。
いよいよこれから!というところですね!
★グループホームについても意見が交わされました!

65歳になっても、介護ではなく障害者のグループホームを利用するためには、どうすればいいのでしょう?そのために必要なことってありますか?

そのためには、障害者のグループホームでなければならない証明が必要になります。その点も、相談支援を利用しながら考えておかなければなりませんね。

老人の方と重度心身障害者の方の、共生型のグループホームを見掛けることがありますが?

見かけることはありますが、まだまだ少ないですね。一つの選択肢として、今後増えていくのかどうか注視していくことも必要ですね。
★親亡き後、子供に様々な選択判断が必要になった時、誰が選択判断をやるの?という声も。

例えば親亡き後に、施設やグループホームを変える場合など、判断をしなければならない状況になった時、その判断は誰がすることになるんですか?

何より本人の意思で判断することになります。
本人に判断能力がない場合、成年後見制度を利用することができますが、相談支援専門員と事業所とともに話し合って判断することもあります。

やっぱりどんな人が後見人になるのか、すごく気になるところですよね。事前に後見人と利用者との相性をチェックをすることもできるんでしょうか?

選任する前に、本人に会って検討する機会を持つこともあります。それができたら、マッチングがうまくいく確率も上がりますよね。
★成年後見制度を利用するときに「本人情報シート」を活用しよう!
様々な場面で必要になる医療の診断書などに「本人情報シート」を活用すると、診断に大変役に立ちます。
本人情報シートは、まだまだ周知はされていないようですが、これができたことは画期的なことで、後見人を選択するときに利用することで、合った後見人を選ぶための情報にもなります。
実際、選任するときに利用されたことがありました。

また、法人が多職種で話し合って情報をあげた方が、本人と合った後見人を選任しやすいのではないかという情報も!
実はこの本人情報シート、hand to handの第四回勉強会で取り上げられました!
■■■本人情報シートはこちら↓
★裁判所に相談に行った方の体験談もありました。

子供が入所しているのですが、施設から後見人を立ててほしいと言われました。実際、入所施設などは、今そう言われることも多くなっているようです。
入所先と居住地が違う場合、申し立てをする裁判所は、入所施設の所在地にある裁判所になるそうです。
そこで裁判所に出向いて成年後見制度の話を聞いたら、とても丁寧に説明をしてもらえました。一度裁判所に、制度や疑問点について聞きに行くのも良いのではないかと思います。

貴重なお話ですね!裁判所に説明を聞きに行くことは、思いつきませんでした。
とても良い体験談が聞けました。
★埼玉の行政書士の篠原雄太郎さんに、プチセミナーをお願いしたところ、快く受けてくださいました。
参加された方達からは、とても勉強になったという声をいただいています。
■■■篠原さんのセミナー資料はこちら↓

内容
①親亡き後の現状(現場と制度の側面から)
②親亡き後への備えとして知っておいた方が良いこと
篠原さんは、福祉施設の現場を経験した経歴をお持ちで、現在行政書士として活躍されています。現場で利用者さん達と関わった経験が、現在のお仕事にも反映されています。
★篠原さんにも多くの質問が飛び交いました。質問に対しての回答がこちら!(抜粋)↓
・後見人をつける目的は、障害を持ったご本人の保護をすることです。保護の中でいかに自由を守ってあげられるかが大事です。
・親族が後見人になっても、親族がお金を自分のことで使ってしまうなどの不正利用が見つかることもあり、親族が後見人になるのがいいとは限りません。
・後見人を立てるタイミングの一つに、ケースバイケースですが、親亡き後の遺産分割協議があります。相続がそのタイミングになる、ということですね。
・後見人は、一度決まれば変えることができません。早い時期に立ててしまうと、手数料などで財産がどんどん減っていくことになります。
後見人を立てるのは、最終手段として取っておく方がいいのかもしれませんね。
・遺言書を、法務局に預けて保管するサービスが7月から始まりました。
法務局に自筆証書遺言を預ける時は、預けていることを家族など誰かに伝えておいた方が、遺言書の行方を探すことにならなくて済みますよ。
======公正証書と自筆証書遺言について======
・公正証書遺言は公証人が作成(原本は公証役場で保管)
・自筆証書遺言に関しては7月まで保管する手段が本人任せでした。
遺言者の死後に家族が探さなければならないという面倒が発生しており、法務局での保管が始まったことに繋がります。

などなど、他にもたくさんの質問に答えていただき、情報も教えていただきました!
10分という短い時間でのミニセミナーでしたが、とても分かりやすく説明して頂き、参加者からは「関心を持つことができた」「これから親亡き後の準備をするにあたり、教えてもらえて良かった」などの声が上がりました。
★親亡き後の選択肢として、保険信託もあります!ファイナンシャルプランナーから、概要の説明をしていただきました。

保険信託は、財産を多く持っていないと難しいという考えから、選択肢から外されることも多かったのですが、今は保険会社で信託の子会社を持ち、契約した保険で運用することを実現した保険会社もあります。
①財産があるなしにかかわらず契約できる②契約者が生きている間は変更可能③お金を監視する人を設定できる・・・という点が大きなメリットと言えますね。
また、若いうちに試算しておけば、保険料も安くて済むので、一度選択肢の一つとして考えてみてもいいのではないでしょうか。
★「親心の記録」って知ってますか?(篠原さんより)
「親心の記録」
親亡き後、障がいを持つ子どもが適切な支援を受けられるように、親が生きているうちに子供の必要な情報を記入しておくノートです。
本人情報シートと同じように、様々な場面で活用できます。
「親心の記録」入手方法↓
https://yukari-tokyo.jp/about-us/society/society-introduction/
◆参加頂いてありがとうございました。お会いできなかった方は、また次回。
初めてのweb交流会だったので、スタッフも慣れずにバタバタしたり、音声もハウリングを起こしてしまったり、色んなトラブルはあったものの、無事に2時間の交流会を終えることができました。

今後は、親亡き後をまだ意識していない保護者にもご参加いただけたらと、内容も考えていきたいと思います。
これを機会に、ますます繋がりが広がっていけばいいなと感じます。
この後、ご参加いただいた方にアンケートをお願いすることにしました。
今後の勉強会や交流会の参考にします。また、活動にも生かしていきますので、アンケートの届いた方は、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう!
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★今回の交流会に関連した以前の勉強会の報告はこちら
hand to hand 第二回勉強会「成年後見」について↓
「保険信託について」について↓
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