令和2年9月27日に、オンラインイベント「長澤司法書士に聞く!親なきあとの相談、どうすればいい!?」を開催しました。
30人を超える参加者で、とても濃い2時間を過ごすことができました。
内容の報告は、ここに書ききれない程の濃さと多さなので、今回はイベント終了後に集めたアンケート内容と、その中で書かれた質問に対して長澤司法書士がお答えいただいた内容を、そのままここに掲載いたします。
ぜひ、ご参考にされてください。
◆皆さんの感想から◆
同じような内容は、まとめて内容は変えないように編集しています。(抜粋)
◆専門家や当事者様を含めた会は本当に貴重な場だと感じました。
◆長澤さんの人柄の良さが伝わってきました。また、第2弾をお願いしたいです。
◆「?」と思っていた事、全然知らなかったことが幾らかでも分かりました。
◆法律の専門家からお話を聞く貴重な機会でした。
◆漠然とした不安を解消するためにも、動けるうちに繋がりを作っておくこと、また信頼できる人を見つけることが大切だと思いました。
◆何回かに分けてシリーズ化するのもありだと感じました。
◆長澤先生のお話が大変分かりやすく勉強になりました。 福岡だけでなく、全国レベルに視聴者を募って頂き参加できました。
◆普段不安に感じていることが、理解でき安心しました。
◆ただ漠然と「後見人制度」と受け止めていたところに、具体的な内容を聞くことができて、親亡き後の選択肢を考える上で大きな材料が増えた方が多かったのではないかなと感じた。
◆これまで、成年後見人は不要だと思っていたのですが、場合によっては必要になるのだということがわかりました。子供が未成年のうちに、このお話聞けてたら良かったと思いました。
◆貴会には長澤先生という素晴らしいアドバイザーが いらっしゃって羨ましいです。
◆グループワークが短く感じました。グループトークの時間ももっとあればさらに良かったと思います。
◆行政書士としても、色々と学ばせていただきました。報酬額の目安など具体的なお話も伺えて、大変参考になりました。
などなど、多くの感想をいただきました。ありがとうございました。
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◆質問にお答えします◆


長澤さん。すでにご自身で親なき後に向けて動いていらっしゃる方からのコメントと質問です。
私たちにも、とても参考になるコメントでした。

Q.ひとりっ子できょうだいに託せない家庭について
【家庭状況】
わが子はひとりっ子25歳です。親権を使っての任意後見はできません。
本人の日常に必要なお金は親が管理し、家計簿も本人分を分けて付けています。
親が生存中、本人に生活費以上まとまったお金が必要な場合
・障がい者本人が有料老人ホームに入る入居金
・グループホームを親が立ち上げる費用
・重度訪問介護を使って暮らすための住まいの賃貸契約をする 本人には重い知的障害があり、契約主体になれません。 本人は契約が出来ないので親が契約者として支払います。
そのため、本人名義の預金を増やすのではなく、 親自身が本人のために使えるように親名義のお金を蓄えなければなりません。
両親ともに亡くなれば、全ての財産は本人にいきます。
【対策】
親のどちらかが亡くなった場合に備えて遺言書を作成しました。
(1)どちらか残った方に亡くなった方の全財産を相続させる
(2)それぞれを遺言執行者に指定する(たすき掛け)
これにより本人の遺産分割書の署名実印は不要で銀行から法定後見人を 求められることはなくなります。
シングルマザー・ファザーになったら、自分の任意後見を準備する。 高齢になったら子どもの法定後見を家裁に申請する。
【質問】
①親の任意後見契約の中に子どもの法定後見申請へのメッセージを残したら 誰がどの様に取り扱ってくれるか。
②家族信託は良い方法だと思うが、お願いできる親族がいない場合は 何か別の方法はあるのか
③親は自分のことの始末を考えなくてはならない。
遺言書、死後事務委任、延命治療について書き残す 不動産を処分し現金に換えておく、墓は残さず合祀にする。
この他に何かしておくべきことはありますか。
④子どもが最後に亡くなる場合、相続人はいないので国庫に入ることになるが 、その手続は誰がするのか。
国庫に入れず寄付や遺贈をするのは可能か。
本人が遺言書を書けないのでどの様に準備できるか。
ひとりっ子できょうだいに託せないご家庭には共通の悩みではないかと存じます。

[A] . 質問全部にお答えします!
たすき掛けの遺言はとても有用で、遺言執行者も重要なので、とても良い対策をとられていると思います。
ご質問に答える前に、前提として、今回のセミナーでは、後見制度や親なきあとのお話をお伝えして、制度のご質問やどんな問題点があるのかなど、参加していただいた皆様に共通する事項についてのお話をする趣旨でした。
個別のご相談については、親の希望や財産の種類や金額、家族構成等、詳細を伺わなければ回答できないことが多く、抽象的な回答になってしまう部分があるのをご了承ください。
①任意後見契約は、「契約」という通り、中身はある程度契約内容として融通が利きます。
そのため、任意後見契約の中に、法的に問題ない内容を盛り込めが有効になりえます。
誰が取り扱ってくれるかというのは、任意後見人が動ける間なら任意後見人が取り扱うため、それに見合う内容と検討する必要があります。
なお、法定後見人の職務の範囲は、法律で決まっているので、それと異なる内容であれば無効になりうると思います。
②家族信託は、財産を任せる人(=受託者)を決める必要がありますが、「家族」信託という名称であっても、受託者は家族でなくてもかまいません。
そのため、受託者は親戚、友人、施設、NPO法人などもなることが可能ですので、信用できるところで、受託者を受けていただける人や団体を探すのも一つの手段です。
なお、他の方法はどういう流れを具体的に希望されるかによってきますが、自分が亡くなったら財産が子どものものになり、子どもがなくなったらこうしてほしい、という希望であれば、信託以外の方法では難しいかと思います。そのような内容の遺言を「後継ぎ遺贈」と言ったりしますが、問題になる可能性が高いです。
③死後事務、延命治療の意思も書面作成しておくことはとても良い方法だと思います。
その他にしておくことというのは、ご家庭により変わってきますので、一概にはお話できませんが、注意点や他にどういう方法とっている方がいるのか、一例をあげさせていただきます。
今しっかり対策されて作成されている書類が、万が一の場合にしっかりと伝わるようにしておくことが重要だと思います。
公正証書で作成、信じられる方に託しておく、エンディングノートを作成しておいて、目立つ場所に置いておく方もいらっしゃいます。
不動産の処分も生前に行うのが良いのか、もしくは遺言で遺言執行者に任せる。
頭ははっきりしているが身動きがとりにくくなった場合の財産管理委任契約の検討、親自身の葬儀はどうするか(ご葬儀を諦めている方もいますが葬儀会社が喪主代わりをしてくれる会社もあります)、などの対策をされている方もいます。
④最終的には利害関係人等が裁判所に相続財産管理人を選任申請して手続きをとるかと思われます。
お子様が亡くなったあとに寄付をしたい場合は信託を使う場面かもしれません。

hand to hand の勉強会やイベントでも、当事者家族での参加はお母さんが多いのですが、こんな質問も来ています。

Q. パートナーとの温度差を感じます
「何をすればいいか分からなくて不安」と言う答えは、私も同じでした。
ただ、このオンラインイベントに参加した方は、実際に具体的に「こういうことをしてみよう」と思われたと思いますが、パートナー(配偶者)が参加していなかった場合、お互いの「温度差」が大きい様に思います。
財産と思うようなものがあった場合、後見人をお願いしなくても良い様にするための事をしてくれたら・・・と思ってしまいました。

[A] これはおっしゃる通り困っている問題です
参加されなかった配偶者との「温度差」が非常に大きく、お子さんの将来だけでなく、ご夫婦自身が守れない場合があります。
私のところにご相談に来られる方はお母さまが多く、それを家で伝えようとしても、ご主人にうまく伝わらず、反対された、結局ご主人も来られて二度手間になってしまったようなことが起こります。
そのため、個別相談の場合は、なるべくご夫婦で来られてください、とご案内をしております。

Q. 遺言書の中の予備的遺言に子どもの法定後見申請のメッセージを入れれば対応してもらえますか?

[A] 遺言だと原則は難しいかと思われます
ただ、全く遺言で後見のことを記載できないかと言えばそうではなく、未成年後見人や未成年後見監督人を遺言で指定するなど(民法839条)、一部認められているものもあります。
なお、遺言の中には附言事項というメッセージを書く部分もあり、そこでメッセージを残しておけば法的効力はなくとも、相続人への希望を伝える方法としては使うこともできます。

Q. 障がいのある子がなくなって法定相続人がいない場合は?
残された財産は国庫に入ると伺ったが、その手続きは誰がするのですか?

[A] 一つ目のご質問④と同様になるかと思われます

Q. 家族信託も良いが、託せる親族がいない場合は他にどの様な方法がありますか?

[A] 各ご家庭の事情やどういう財産の活用をしていきたいのかなどのご希望次第になるかと思います
例えば、株式運用や不動産運用などを考えているなら信託が、運用して利益を出すのではなくて管理だけできれば、という形なら後見や管理契約などが選択肢に入ってくるかと思います。

今回、とても多かったのは次の意見なんです。
長澤さん、子供が成人した場合の親の考えかたって?

Q. 子どもが未成年のうちにこのお話聞けてたら良かった!
参考になりました!
これまで、成年後見人は不要だと思っていたのですが、場合によっては必要になるのだということがわかりました。
うちの息子は20歳過ぎていて、未成年のうちにこのお話聞けてたら良かったと思いました。

[A] 二十歳以上の子をもつ親御さんからいつもこのご意見いただきます
ありがとうございます。
ただ、お子さんが知的障がいのレベルが軽ければ成人しても任意後見契約を結べる可能性もありますし、また、任意後見契約が結べなくとも、選択肢が一つ減っただけで、他にとるべき対策は様々あるので、お子様の将来や親自身のことを考えるきっかけにしていただければと思います。

Q. オンラインでの相談は可能ですか?

[A] オンラインでの個別面談なども行っております
ネット環境は課題ですが、移動時間や交通費がかからない分、安い費用でご相談にも乗れるようになっているので、これからも活用していきたいと考えています。

長澤さんのお人柄から、長澤さんに相談したいという方もいらっしゃるようです。気軽に相談に乗ってもらえますよ。
費用もそのご家庭によって都合があるので、応相談でとのことでした。
困った方は、たとえお金がなくても救われなければならないから!と熱く語られました。
長澤さんへコンタクトを取りたい方は・・・
■日本相続知財センター 福岡——————————————–
〒812-0013 福岡市博多区博多駅東2丁目18-30 八重洲博多ビル603号室
※電車・地下鉄空港線「博多駅筑紫口」から徒歩5分【GoogleMapsで表示】
➿ 0120-33-2794
TEL:050-3850-4396 / FAX:050-3850-4398
あるいは、以下のメールアドレスから(hand to handで仲介いたします)
info@specialneedsassist.com
◆今後の要望・取り上げて欲しい内容◆
◆福祉サービスを利用されている方の親御さん達は、事業所とのやり取りを重ねる中で感じておられる問題、またご本人さん達からサービス事業所での出来事を色々と聞かれて考える事が沢山あるのだと思います。
正直なところ、こうして欲しい・こうだったら良いのにねと言う声を伺ってみたいです。
◆当事者の親御様が知りたい情報、親御様が知れてよかった情報など
◆任意後見を利用された実例などあれば、個人が特定されない範囲でご紹介いただけたらと思いました。任意後見のきっかけや、契約時のやりとりなどを含め、生の事例があると保護者さんたちもより身近に感じられるのではないかと思いました。 ご検討いただけましたら、幸いです。
◆「65歳問題」や「医療的ケア」が必要になった時の受け入れなど、気になっています。
◆実際、グループホーム(施設)に入られた方の収支や生活レベルを知りたいです。
◆相続、遺言の具体的な事例研究(ひとりっ子を含む)
◆重度障害者グループホームに対する、行政やグループホーム事業者の考え
◆親亡き後の住まいの現状と今後の課題について一緒に考えてみたいです。
などなど・・・。

アンケートに答えてくださった皆様、ありがとうございました。
今後もhand to handは、みなさんとともに学び、行動していける場所になれるよう頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。


親なき後のお金の問題の他にも、身の回りを考えるとやっておかなければならないことって、実はいっぱいあるんです。
終活とは?
このことを知っていたら、色んなことが見えてくる!!
一緒に考えましょう。後見のこと、終活のこと。
2020年10月24日 at 10:39 AM
アンケートの結果の取りまとめや回答、本当に勉強になりありがとうございました。
個人で調べたりする事が難しかった内容も、いろんな参加者がおられるグループでの、ディスカッション後に見える、自分なりの方向性が、意識付けも含めてなんとなく出来て大変良かったです。
2020年10月31日 at 5:15 PM
島田さま
いつもご参加いただき、ありがとうございます。
またコメントもいただき、大変嬉しいです。
イベントを行うスタッフにも、大変励みになります。
長澤さんにもお伝えしますね。
今後ともよろしくお願いいたします。