最近では、一般の人も医療や障害についての用語を知っていたりして、驚くこともしばしばです。テレビなどでも障害について取り上げられることは、昔のタブー視されていた頃からすると随分開かれてきたようで、概ね良いことではないかと思います。たぶん、そんな用語が認知されるようになったのも、そんな影響が大きいのでしょう。

ただ、そのように広く認知されてきたことに対して、ちょっと危うく感じることもあります。それは、日本語が言葉のひとつひとつに意味があるゆえに、それらの用語に対しても、ついついイメージで語られてしまっている時があるからです。

実際にイメージが先走って使われてしまった場合に、ハンディキャップを持った子どもを育てている親達を強く傷つけてしまうことがあるんです。「二次障害」という言葉もそうです。

今回は、この言葉の本当の意味を知ってほしいこと、そして、用語の言葉をイメージだけで捉えることの危険性について知ってほしいと思います。

「二次障害」を簡単に解決できる方法があるのか

そもそも「二次障害」とは何なのか。様々な専門書などでは、もともとの障害(一次障害)が、不適切な対応によって、二次的にさらに問題が激化すると説明されています。

実際には、とても専門書の一冊に書ききるはずのないほどの、様々な要因が絡みあった結果なんだと思います。二次障害を軽減させるには、適切な対応に切り替えれば解決すると容易に書かれた本もありますが、そんな簡単なことじゃない! というのが本音なんです。

様々な要因がある、と先に書きました。その要因は環境にあるのですが、人は生活をするには色んな場所に身を置きますし、色んな人と会います。天気や気温や人がコントロールできない事象もあります。

毎日その全てを管理することは不可能です。環境は日々変わりますし、体調だって環境には大きく左右されます。

二次障害を軽減に導くのは難しいので、二次障害を起さないように……ということが最善だと言われていることは、確かにそうだとは思います。けれど、とてもとても敏感な彼らのために、環境を整えるという作業がどれだけ大変なことなのか、それを知っていれば、例えよかれと思っての環境作りが失敗しても、責められないと思うのです。けれど、親達はその環境作りを日々もとめられるのです。

「二次」は「悪い育て方」だという勘違い

最近は本当に「二次障害」という言葉さえも知っている一般の方達にも出会います。興味を持って頂けることは本当に有り難い。けれど、その本来の意味を知らずに、イメージである場合が実に多いのです。

専門家や支援者の人達は、この「二次障害」をきちんと理解した上で対応して下さっていると思うのです。けれど、知らない人達からは、違った意味の言葉で投げかけられます。

本来の障害は大したことないのに、親の育て方が悪くて障害が重くなった!

これです。

それまでも、親は散々言われてきています。育て方が悪いという言葉を、何度となく突きつけられます。もうこれは避けられない運命みたいなものです。それで疲弊することもあります。そうしているうちに、やっぱり私の育て方が悪いのか……と思ったり……。

結局、そんな経験をしてしまうと、普通に色んなところから聞こえたり見えたりする「二次障害」という文字が「あぁ、また親が悪い、不適切な対応で育てたと言われてる」と思ってしまいます。ちょっと卑屈に見えるかも知れませんが、そのくらい責められてきた事実があることは理解してほしいと思うところなんです。

やっぱり説明が足りないんだと思うんです

普段話すときには、わざわざ説明文を話すよりもさらりと「二次障害」と言ってしまった方が早いし、解っている人同士で話すときは何の問題もないと思います。ただ、ちゃんと理解していない人には説明が要ると思うんです。で、その説明も少し考えてほしいのです。

よく見かける「二次障害」の説明文は「不適切な対応がもたらす二次的障害」という文章です。まったく間違ってないんですが、これでは説明不足だと思います。一般的に、子どもに対応するのは親であるから、親の不適切な対応だと変換されるのは仕方ないと思うんです。

親が全く悪くないとは言いませんが、親ばかりが原因になったように見てとれるのは、親にとっては奈落に突き落とされたようなものです。でも、自分が悪いんだと思い込むので反論もしませんし、その言葉を聞いても聞き流したふりして、実は心に刺さっているんです。

実は、このことを言った人がいなかった

先日、わたしはある勉強会で、強度行動障害の親としての話しをさせていただく機会を頂きました。集まって頂いたのは、障害者支援、老人支援、相談員、ボランティア、コンサルティングなどされている方や、障害を持った子どもさんのお母さんもいらっしゃいました。

その中で、わたしはこの話しもさせて頂いたのですが、あるお母さんが「ずっと思っていた、言ってもらえて良かった!」と言われたんです。やはり、言うことができなくて、心の中に仕舞っていたんですね。

意外にも、勉強会ではこの話しに反応して下さった方が多かったようでした。語られることがほとんどなかったからでしょうか。勇気出して言って良かったと思いました。

「二次障害」の要因である「環境」は子どもの家庭だけではない、不適切な対応は、子どもに関わった人なら誰もがやってしまう可能性がある……ということを知って欲しい。

ただただ、それだけなんです。

障害児を育てることを応援してほしい

そもそも親はずっと、何かと育て方という呪縛的言葉に翻弄されやすいのです。だから、「二次」という言葉にも不必要に反応してしまうのかも知れません。

だからこそ、障害児を育てている親達がいたら、周りは応援してほしいのです。周りが応援に回ってくれるようになれば、本当に間違ってしまった時も修正をかけるだけのバイタリティーももらえます。

そして、その応援によって子育てと言う呪縛的言葉から、そしてさらには「二次障害」という言葉から解放される時がくるのだと思います。

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