重い障害を持った息子さんのお母さんから、素敵なお話のご寄稿をいただきました。

障害があるから、本人が嫌がるかも知れないから、まわりに迷惑をかけてしまうかも知れないから……そんな思いから諦めて、親心を心の奥にそっと仕舞うことがあります。

そんなとき、施設のスタッフからの一言で、その親心が表に引き出されました。

「やってもいいんだ!」

お母さんのワクワク、親としての喜び。

スタッフの一言で、支えてもらえると思ったことで、諦めが行動に変わります。

どんな障害を持っている子どもでも、その家族でも、支えてくれる人達が側にいたら、実現できることはたくさんある!

そして「息子次第」「彼が選ぶこと」と、おおらかに受け止めることのできた喜びが綴られています。

このストーリーはとても短い時間の間に起こった、けれどとても深くて暖かい、親としての気持ちがギュッとつまったお話です。

支援者として頑張っていらっしゃる方々にもぜひ読んで頂きたい。

「実現できない」と思っていたことを「実現できる」に変えるために、たくさんの応援者が増えていきますように……。

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(寄稿)

重度の知的障害のある自閉症の息子を育てながら、得たものもたくさんありますが、諦めたこともたくさんありました。

お出かけ場所や、ヘアスタイル、ファッションなどなど…

七五三での衣装をつけての写真撮影や、小学校のランドセルに、スーツ、

同年代の子たちが身にまとう、イマドキのファッション、

『子どもが選ぶ』のがいちばんなのでしょうが、息子は喋ることができないので、なかなか意思を読みとることが難しいことも多くあります。

子どもが着心地いいものがいちばんいいとはわかっていながら、周りと同じように、晴れ着を着せたい、という、親心は心のどこかに残っています。

今日、お世話になっている施設の職員さんから連絡をいただきました。

連絡をいただく時は、いつもドキドキ。

よからぬ知らせなんじゃないかと変に勘ぐったりしてしまいます。

内容は、というと、

『今月の成人のお祝い会に着る服を持ってきて欲しい』との事でした。

感覚に過敏さがある息子は、着れる服が限られています。タグは外さなければいけないし、ボタンやチャックなど、布以外のついた物は、あまり受け付けません。いつも、ジャージにトレーナーが定番。何度となく、学校の制服なども試してみましたが、受け入れてくれませんでした。

今回も、きっと無理かも…

とお答えしたのですが、

スタッフさんから、『せっかくだからぜひ~』と返ってきました。

何とか、着れそうなものを見繕ってきます、と言ったものの、息子が受け入れてくれそうな、晴れ着チックな服はあるのだろうか?と、思いながら、ショッピングセンターへ向かいました。

息子の服を選ぶ時は、決まって、ジャージにTシャツ、トレーナー。今時の若者が着る、おしゃれな服は見ることがありません。

ですが、今日は違います。

ジャケットに、パンツ、お洒落な服の並ぶコーナーへ。選びながら、はっとしました。

こんなに楽しい服選びをしたのは、いつぶりだろう?と。ここへ来るまで、「どうせ無理よね~」と、何処かで思っていた自分がいました。

スタッフさんの一言がなければ、ジャージで仕方ないよね、と思ったままで、当日の、晴れの日にいつもよりカッコよくキメてる息子の姿をワクワクと想像しながらの楽しい服選びはできなかったでしょう。

結局、息子が着てくれるであろう、ウエストゴムのパンツとTシャツ、ちょっと冒険して、ニット素材のジャケットをチョイス。

着るか着ないかは、息子次第。

それでもいいと思っています。

彼のための、彼が選ぶ成人式。

彼がいちばんいいと思えるシチュエーションで、といっても、周りが想像している部分が大きいのでしょうけれど。

母として、楽しい服選びを久々に体験できたこと、晴れの日を素敵に演出したいと思ってくださるスタッフさんに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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