この本は、わたしの大事な友人が贈ってくれた、わたしの大事な本の中の一冊です。

この本のページをめくると、ノーマライゼーションという言葉さえかすむほどの優しさあふれる人々の交流が、子ども達の目線で描かれていました。

これは淡路島の美しい自然の中で共に生きる、本当に実在する人々のお話です。

ことばでわかりあえなくても、心はわかりあえる(本の帯より)

ストーリー

物語は、淡路島の小学校に転校してきた「ゆうすけ」の目を通して、転校初日に出会う“ふしぎなともだち”自閉症の「やっくん」との交流が、二人が大人になるまで描かれています。

最初はやっくんの不思議な行動を、学校の先生も友達もなにひとつ特別に見ることなく、普通に受け入れていることに驚いたゆうすけでしたが、やっくんと友達との日々を過ごすうちに、ゆうすけもまた少しずつやっくんを受け入れはじめ、普通に友達として付き合うようになるのでした。

やっくんのお母さんは、やっくんを心配しているのだけれど、小学校卒業の日の先生の涙は、やっくんがみんなに愛されていたことを物語っています。

中学に進学すると、やっくんを知らない先生や子ども達の無知から、やっくんを知っている子ども達がやっくんを守ります。やっくんをいじめた上級生に、ゆうすけは体を張って立ち向かうのでした。

大人になったやっくんは、作業所でメール便の配達の仕事を始め、ゆうすけは郵便配達の仕事に就きます。ある日ゆうすけは、やっくんのトラブルの現場を目撃します。やっくんの自傷の痕を見たゆうすけは、やっくんの頑張りと大変さをおもんばかります。

そして、ある風の強い日、ゆうすけは仕事で大変な失敗をしてしまいます。そんなゆうすけを励まし助けたのは、“ふしぎなともだち”やっくんでした。

作者はあの「たじま ゆきひこ」さん

たじまさんの代表作には「じごくのそうべえ」があるよ! と言うと、ほとんどの人から「あ〜、その人ね!」と返事が返ってきます。そのくらい有名な本ですよね。

あの独特な型染めで描かれる絵は、今は淡路島の豊かな自然の中で生まれているのだそうです。

京都から淡路島に引っ越して、この絵本の元となる話を聞いたたじまさんは、それを本にしなければと決心します。

たじまさんは、自分の頭の中の絵本の構想、できあがるまでの葛藤、奥さんの叱咤激励、取材での人々の言葉達を丁寧に紡ぎながら、すばらしい絵本に仕上げられました。

本の中に差し込まれているしおりの中の「作者の言葉」に書かれていることをご覧いただければ、この本がどうやってできたのかが分かります。

また、しおりの中で(やっくんのモデルになっている)かあくんのお母さんは「不幸な子を持つ不幸な親と嘆いていた私は、今では変化に富んだ人生を謳歌する、とても幸せな親になっている」と語っています。

それは、様々な壁を乗り越えた母の優しく強い姿であるだけでなく、学校の友達、校長先生や担任の先生の理解と、淡路の自然と人々の中で伸びていくわが子に、自分の幸せが重なっていったからなのでしょう。

人は人としかつながって生きていけない。「お互いが心でつながれば、言葉や道具は飛び越えて、わかりあえることができるんだ」と教えられた気がします。

ぜひ、家族みんなで読んで頂きたい本です。

ふしぎなともだち
ふしぎなともだち
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たじま ゆきひこ
くもん出版
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